雨の中通勤していた思い出
2007年1月、脳腫瘍の手術をした私は一命を取り止めましたが、後遺症のため弱視の視覚障害と右足に麻痺が残りました。
長期間のリハビリを経て、2009年9月、夢が叶い、勤務していた職場に復職しました。
脳腫瘍を発症するまで、鉄道車両の整備作業だった私の仕事は、頭に衝撃を与えないように電話番やパソコン作業、コピーなどの事務作業に変わりました。
事務作業は楽しくこなしていましたが、一番やっかいだったのは、通勤時の雨でした。
身体を支える杖を右手に、視覚障碍者と一目でわかる白杖の杖を左手に持って通勤していました。
両手に杖を持ち、傘がさせなかった私は、1日中雨が降る予想のときや、雨天のとき、もっぱら上下別々になったレインコートを着用し通勤していました。 夜間や悪天候の暗いときでも、上着につけられた反射材が明るく光りました。
その後、事務作業が忙しくなり、パソコンを頻繁に使っていた私の肩や腰に痛みが発生し、調子が悪くなりました。
運よく職場から自宅までの途中にあった接骨院に数日ごとに通院していた私は、雨が多い梅雨時は、雨の中を歩かなければなりませんでした。
レインコートを着用して接骨院に到着すると、「こんな雨の中お疲れさま」と院長先生にねぎらいの言葉をいただいていました。
ある日、梅雨が明け、晴天の日が続いていたのに、
終業時間の30分前ごろから天気が急変し、大雨と雷になりました。
「レインコートなんて持ってないよ」と思った私は、上司に「帰り支度をしなさい。」と言われ、準備を始めました。
ロッカーで着替えた私は、上司に職場の車で自宅まで送っていただきました。
職場を離れた現在でも、10年前、自宅まで送ってくださった上司の心暖まる行為は、よく覚えています。
脳腫瘍が再発し、車いす生活を余儀なくされた私は、雨が降るたびに雨の中歩いて通勤していたことを懐かしく思い出します。