夫が本当に優しい人だとわかった時。付き合っている時から、優しい人だとはわかっていたけれど、私が起こした惨事で夫の優しさがわかりました。
私たち夫婦はお互い広島で買った結婚指輪をしています。
夫は広島県で結婚式で指輪交換をしてつけて以来、一度も取ったことがないそうです。私はというと、ハンドクリームを塗るたび指輪を取ってはめ直していました。乾燥肌で手荒れのひどい冬場、くまなくハンドクリームを塗りたい上、指輪裏側、メレダイヤが埋め込まれたくぼみにハンドクリームが入るのが嫌だからでした。
広島の結婚式場で結婚して一年が過ぎる頃、指輪との生活に慣れた私は、研修場所の駐車場、車内でいつものようにハンドクリームを塗りました。そこまでは覚えているのですが、その日就寝前、ハンドクリームを塗ろうとすると指輪をつけていないことに気づきました。
夫は、パニックになった私をなだめて、今日の動きを確認してくれました。すると研修場所の駐車場だということが分かりました。しかし、私たちが住んでいるところは雪深い地域。さらにその日は大雪で、探しに行きましたが見つからずに終わりました。泣き崩れる私に「同じのを買ってあげるよ」と言う夫。「同じ物を買っても、広島での結婚式ではめた指輪とは違う」と泣く私。そうは言ったものの、何もなくなった左手薬指が毎日悲しくて、いつもおしゃべりな私がとても静かな1週間でした。
そして1週間経った晩に、夫がなんと指輪を買ってきてくれました。
でも前のと違い、こう言ってはなんですが、少し安そう…と思っていると、「それは新しい結婚指輪が出来上がるまでの予備だよ。前と同じように刻印なども注文したからね。指輪がないことを悲しんでいる姿をもうこれ以上見たくないから。」と言ってくれました。
この瞬間、なんて優しいんだと心から思いました。同時に安そうだと思った予備の指輪も好きになっている自分に気づきました。後日、新しい結婚指輪が届き、とても嬉しい経験をしました。しかし、また後日談ですが、クレジットカードの明細が届きました。
予備の指輪一万数千円、新しい結婚指輪十数万円の記載がありました。夫の優しさはわかりましたが、家計を夫婦まとめている私たちなので、後から考えたら予備の指輪代、安そうと思ったわりには高いな…なんて思ったりもしました。そして、もちろん言うまでもなく、ハンドクリームをつけるときに指輪を取ることはやめました。